そう思うと、鯨がもっと恋しくなる。

哀しいくらい恋しくなる。



奇跡なんて、起こるわけないんだ。

雪なんて、降らない。



そんな簡単にいくわけない。

私の気持ちだって、届くわけない。




いらない。

こんなに苦しいなら。

こんなに痛いなら。



いらない。




膝に、大粒の涙が一粒落ちた。



「いらない……!」



私はキッと写真を睨み、びりびりに破り裂いた。

加減を知らない強さで、思い切り破いた。




いらない。いらない。いらない。




鯨の夢を破ったようで、

かすかに抱いていた希望を破ったようで、

私は目の前が真っ白になった。




破いて息を乱して、

私は今まで鯨と過ごしてきた時間を思い出した。




楽しかった。

幸せだった。




鯨の笑顔だけが頭に張り付いて、離れなくて。

私は膝を抱えてうずくまった。





もう戻れないかもしれない。

今までの2人には戻れないかもしれない。





そんなの嫌だ。






好きだよ、鯨。

大好きだよ……―。