「なー由紀、これ見て」
「ん?」
鯨はある一冊の雑誌を取り出して、
机の上に置いた。
私は体を近づけてそれを覗き込んだ。
『ウィンターフォトコンテスト。作品募集』
「写真コンテスト~?」
「そ!俺も趣味で写真始めてもう一年。そろそろ実力試しってとこだろ」
私は少し呆れ顔で、ふ~んすごいね、と言い返した。
鯨は案の定、ムッとした顔を私に向けた。
「何だよ、由紀。もっと応援してくれよ。お前にはモデルになってもらうかもしんないんだから」
「はっ?嫌だよ」
「嫌なんて言うなよ~。俺らの仲じゃん。なっ?この通り!」
「無理」
「んだよ、それぇ~」
鯨は拗ねるようにして、
床にバタッと仰向けに寝転んだ。
私は机の上の雑誌を
もう一度パラパラとめくった。
そこには去年の優勝作品が載っていた。
真っ白い雪のじゅうたんに、赤い花びらと小さな足跡が少し。
クロネコが空を仰いで座っている。