母の病死は、まだ幼かった幸守には、あまりに悲し過ぎる現実だった。

故に、母の死後一年も経たぬ内に後妻を迎えた父を、幸守は許せなかった。

更に、幸守を遠ざけ、その存在すら忘れてしまったかの様な父の行為は、幸守を深く傷付けた。

悲しみ…傷付き…深い孤独の中で、幸守はその全てを憎しみに染める事で、今日まで生きてきた。

もはや幸守にとっての父とは、この世で最も憎むべき人物でしか、あり得なかった…。