「幸守様…。幸守様…!」

慌てたように辺りを見回しながら、初老の男が駆けて来る。

幸守が幼い頃から仕えている二助だ。

二助の声に眼を覚ました幸守は、急いで枝から飛び降りた。

「二助!どうした!?」

「あっ…幸守様!」

二助は急いで幸守の元に駆け寄った。

額の汗を拭い、深呼吸して息を整える。

「実は…」

わずかに震える二助の声に、幸守の表情が次第に硬くなっていく。

視線を伏せ、二助は思い切って口を開いた。

「実は…お館様よりの御使者がお見えになっております…」

その言葉を聞いた瞬間、幸守は眼を見開いた。

「な…ぜ…」

「今更なんでっ!」

そう言い放った幸守の瞳に、怒りの炎が燃え上がる。