その瞬間、幸守の瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。

幸守はとっさに顔を背け、指で目尻を拭った。

「すまない。眼にゴミが…」

「大丈夫…ですか?」

少年の方が、今にも泣き出しそうな顔をしている。

「驚かせて悪かった。もう大丈夫だから」

取り繕う様に、幸守は笑顔を浮かべた。

瞬間、少年の瞳から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。

「良かった…。ごめんなさい…安心したら何か…。あれ…変だな…涙が止まんないや…」

言いながら、少年は手の甲で両目をごしごしとこすった。