慶長五年 三月

人里離れた寺の一角にそびえ立つ大きな桜。

その枝の上で、一人の少年が眠っていた。

少年の名は、
吉井 幸守

幸守はこの「幸守」とゆう名が嫌いだった。

決して表には出さなかったが、名を呼ばれる度に心の奥に鈍い痛みを感じていた。

それでも、今の平穏な生活が、幸守にとってのささやかな幸せだった。

けれども、幸守はまだ知らなかった。

本当の…幸せを。

そして…本当の痛みを…。


運命とゆう名の嵐は、すぐそこまで近づいていた…。