「好きだ。付き合ってくれ。」
それは、
予想もしなかった、
何の前触れもなかった出来事―――…
今あたしがいるのは、体育館の裏側。
男の子に呼び出されたため。
なんてベタなんだ…。
なんて、思う暇もない。
相手が相手だから。
なんで、
なんであたしはこんなことになってるんだ……!!??
さかのぼること、数十分前―――…
―――――
―――
―
ホームルームが終わり、あたしはいつも通り帰りの準備をしていた。
「しぃ、帰ろー。」
親友の麻美が話しかけてくる。
「うん、ちょっと待ってね。」
こくり、と頷く。
帰りの準備が終わり、帰ろうとした、その瞬間、
あの人が来た。
教室の中が騒がしくなり、何事かと思っていた。
「おい、中島椎菜ってやつ、いるか?」
静かで重みのある、けどざわついた教室に響き渡る、綺麗な声があたしを呼ぶ。
声の主を見る。
そこには、学校で一番強くて怖いと恐れられている、滝川琉生。
そんな人があたしに何か用があるの…?
ま、まさか気に入らないことでもした!?
けど、あたしあの人に関わってないし……。
「あたし、だけど……。」
取り敢えず返事。
「ちょっとさぁ、来てくんない?」
え、えぇ~……。
嫌だ、嫌すぎる。
……なんて思いながらも素直について行くあたし。
ちょっと泣きそうだ。
滝川君のあとを三歩後ろで歩いていると体育館の裏側に来たところで彼が振り返った。
ビクッと肩を揺らす。
相も変わらず悪い目付きであたしを見る彼。
ドキドキしながらも彼に耳を傾けた。
「好きだ。付き合ってくれ。」
―
―――
―――――
そうして、今に至る。
「……えっと、今何と?」
すごい間抜けな声だったが、この際関係ない。
「だから、付き合ってくれって言ってんだよ。」
これって…告白、だよね?
とても告白とは思えない口調で言った彼を見ると、少し、ほんの少ーしだけ顔が赤かった。
嘘ではないだろう。
目がそう言ってるから。
けど、けど……。
「ご、ごめんなさい。」
それだけ言うと、彼は一瞬驚いた顔をして、すぐに眉間に皺を寄せた。
「訂正…。お前、俺と付き合え。」
………わぉ。
なんて俺様っぷり。
「え、や…ごめんなさい。」
「ダメだ。付き合え。」
………何こいつ。
さすがにイラッとくるよ?
ちょっとキレるよ?
「ムリですっ!!」
それだけ言って行こうとした。
けど、右腕を掴まれて行けない。
くるっと振り返る。
「ちょっと!!何です――…んぅっ!!??」
フリーズ中。
「俺がこのまま返すと思うか?」
そう言ってそいつは帰って行った。
「何あいつっっ!!??」
最低!最っっ低!!!!
あたしのファーストキスうぅ!!!!
マジ何なの、あいつ!!!!
あり得ない、あり得ない!!!!
あんなのファーストキスなんかじゃない!!!!
…ファーストキスは絶対好きな人と!!って決めてたのにッ!!
滝川琉生、あいつにはもう二度と関わらない。
そう心に誓った。