―グイッ!!―


気付けば大好きな香りに包まれていた。




「っ…ふ…じ…さき……?」



名前を呼べばさらにギュッと強く抱き締められた。




どうしたの…?



どうしてこんなことするの…?



「ーっ…雨苗…!!」



「っ……!!」



どうしてそんなに泣きそうな声なの?



「っ…ふじ…さき……?」



突然のことに頭が回らない。



でも




(あまりに抱き寄せる腕の力が強くて)




「…っ…慧。」




―ドクン…―




大きく跳ねる心臓。



あまりにも切ない藤咲の声に身体は金縛りにあっているかのように動かない。




動けない。




「慧…。」




「好きだ。」





(呼吸が止まった気がした)