呆然と翡翠を見つめるジェイドを、私は穏やかな気持ちで見つめた。


「…エルガは、あなたを妹のように思っていたそうです。あなたが奴隷屋を去った後、翡翠が手に入り、あなたのことが思い出されて。つい作り始めてしまったのだと聞いています」


ジェイドは、私の言葉をひとつひとつ、決して聞き漏らさないように耳を傾けていた。

…彼女にとって、エルガはどのような存在なのだろうか。

それを訊こうとしたら、先にジェイドが口を開いた。


「…エルガは」


形の良い唇が、小さく動く。

ペンダントを見つめる橙の瞳は、柔らかく細められていた。


「私が奴隷として奴隷屋に売られてから、ルトに会うまでの数年で…たぶん、いちばん好きなひとだった。唯一信じられる存在だった」


…このひとと、エルガが。

どんなことを話し、笑い合ったのか。

私には、わからないけれど。

きっとあの店主のことだから、不器用に、優しく、彼女を心配していたのだろう。