私がにっこりと笑うと、テンはまたじわりと瞳に涙をにじませた。
そして、明るく笑い返してくれる。
「…うん。ぼく、ロジンカちゃんに会えてよかった」
…私もよ、テン。
またね、なんて言えない。
もう二度と会えないことは、わかっているから。
それが、こんなにも苦しいなんて。
別れの挨拶の代わりに、ぎゅっとテンを抱きしめた。
彼も、同じ強さで抱きしめ返してくれた。
…私が去った、あとも。
優しいテンで、いてほしい。
テンから身体を離すと、エルガがこちらを見ているのに気づいた。
私はわざと明るく笑って、「エルガ」と名前を呼んだ。
「何か、歌のリクエストはないかしら。この国の歌なら、大体知ってるわよ」
私が言うと、エルガは私の心の内を探るような表情のまま、小さく口を開いた。