…だから、私は……
「…………」
準備が整い、私達は歩き始める。
木の根が張り巡らされた森の中で、私は一度、足を止めた。
そしてエルガと子供達の背中を見つめ、目を細める。
…今夜。ここを、出よう。
そう決意してみると、すんなりと心は落ち着いた。
旅立ちは、夜明けがいい。
皆が寝静まった頃に、ひっそりとテントを抜け出す。
行く宛は、エルガの言っていた依頼所という場所。
人づてに聞き回れば、たどり着けるはずだ。
死ぬ前に、もう一度だけ生きてみよう。
どうせ、記憶を無くして私は一度『死んだ』のだ。
『ロジンカ』として、クエイトにもらった二度目の人生は、もう少しばかり生きてみても良いのではないか。
…そう思えたのは、きっと。
この店の、変わり者の店主のおかげだろう。