ある日の放課後。
部活終わり、忘れ物に気付いたわたしは、教室に戻った。
「…だ……んだ…」
中から話し声が聞こえて、ドアの隙間から中を覗いた。
中で話しているのは、わたし的に学年で一番可愛いと思われる牧野 美遊(マキノミユ)と、隼人だった。
耳を澄ますと、会話が聞こえてきた。
思わず盗み聞きしてしまう。
「隼人君、わたし隼人君のことずっと好きだったの!」
「ごめん」
ガラッ…
勢い良く開いたドアから出てきた泣き顔の美遊と目があった。
よくあるドラマのワンシーンみたいで、戸惑い動けなくなるわたしに隼人は笑いながら
「盗み聞きはよくねぇよー?」
なんて言ってくる。
不謹慎なやつだな、人のこと言えないけど…
でも、美遊が振られてホッとしているわたしがいることに、自分が一番不謹慎だと思う。
何でホッとしているのか、馬鹿じゃないんだから分かる。
わたしは多分、隼人のことが好き。
ユキヤの憧れの好きとは違う、恋愛の好き。
初めて抱く感情に戸惑ったけど、このことを隼人には言わない。
告白なんて、振られるのが分かっててやるのなんて馬鹿らしいし、これが恋なのか保証も出来ない。
もしかしたら隼人を取られたくないただの独占欲かもしれない。
いや、きっとそう。
友達の少ないわたしの友達を取られたくない独占欲。
我ながら情けない…