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『次は〜奈果川〜奈果川〜』
目的の駅に着いてホームを降りると、
まず場所が書かれたメモを取り出した。
(右に曲がって直進、三つ目のコンビニで左…か)
車で来た時には多分この道は通らなかったと思う。
途中花屋で花束を買い
地図の通りに進んで行くと、
「あっ…」
見覚えのある坂道に出た。
きっと、この道を上っていくと…。
どうする。
本当に行くのか。
やっぱりやめておこうか。
そんな思いが頭をよぎる。だが。
『いつかは行かなくてはならない。なら、今日行け』
林蔵の言葉を思い出し、
美波は何かを決心したように顔を上げた。
そしてまっすぐ、道を進んだ。
途中何台かの車両とすれ違い、
とある場所で足をとめた。
周りは灰色に薄汚れているガードレールの中で、新しいものだと分かる真っ白なものがあった。
そのガードレールの下には、もうとっくに枯れている花束。