自分でも逃げているのは分かっていた。
だけど、あそこに行くことで…

あの事故のことを現実として受けとめる。
美波はそうすることが、怖かった。

しかし林造の言うとおり、
いつかは受けとめなくてはならない。

そして、今日がちょうど良いのだろう。

「朝食は、すぐ作る。その間に出かける準備でもしてろ」

そう言うと林造は、
足早に洗面所から出ていったのだった。


言われたとおり部屋に戻り、
着替えてショルダーバッグに財布や定期券など必要なものを詰める。

二十分ほどしてから居間に行くと、
そこにはいつものように朝食が並べてあった。