しかし感謝の気持ちはある。
この人に出会えてなかったら、今ごろ
どうなっていたことか…。

4年前のあの日。


と、昔を思い出しそうになったところで
林造が声をかけてきた。


「今日は、行くのか」

どこに。
それが分かっていたのにも関わらず、
「はい?」
と尋ね返してしまった。


「あそこだよ」


しかし林造は行く場所は一つしか
ないだろう、と言わんばかりの態度だ。

林造は続ける。

「もう5年もたつ。気持ちの整理が出来ていないなんて言うな。それならあそこに行けば整理がつくってもんだろう」

「……」

美波はただ、じっと押し黙っていた。

「いつかは行かなくてはならない。なら今日…行け」

「…分かってますよ。行きます」