一瞬だけ目線をそちらに向けたが、すぐに窓の外に戻すと「うん」とだけ答えた。

「この部屋はね、ある意味ボクのための部屋なんだよ」

ホムラのための部屋って……。

そりゃ、ホムラが今使ってるんだからそれはそうだろうと思ったけど、ホムラの口調はどうやらそういう意味ではなさそうだった。

窓に背を向けてホムラのほうを振り向くと、ホムラの穏やかな表情が目に入った。

「この部屋はね、真南に位置しているんだ」

ホムラの視線は窓の外の池へと注がれていた。

「それに、ほら綺麗な池まである」

「うん?」

南と池と何か関係があるのだろうか? 

でも、ホムラは私のそんな疑問など関係なしに、くるりと背を向けると再びソファへと腰を下ろした。

「ねぇ、ハルカ。この間、ちゃんと話聞いてた?」