暫く呆然としていると、病院の門から1匹の犬が敷地内に入ってくる姿が見えた。

何気なく見ていると、その犬は俺の方に向かってゆっくりと近寄ってきた…


よく見ると真っ白い短毛の老犬で、耳は垂れ下がり全体的に黒く汚れていた。

見るからに雑種の野良犬で、近付いて来るにつれ何とも言えない臭いが鼻を突いた。


(やぁ坊や、飼い犬は快適かい?)

突然聞こえた声に、俺は周囲をキョロキョロと見渡した。

しかし、誰の姿も見えない…


(坊や、ひょっとしてワシが見えていないのかい?)


その一言で、俺はようやく声の主が目の前の老犬だという事に気が付いた。


今俺は立派に犬だ。
どうやら、普通に犬の言葉が分かるらしい…


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