ノーメイクに普段着…

あんなに着飾る事が好きで、いつも外出する時は高級ブランドの服を着て、高価なアクセサリーに身を包んでいた人が?


「余程慌てて来たんだと思う…
私が気付いて病院に行ったのは、事故から2時間後。

その時にはもう来ていた訳だから、事故の連絡があって直ぐに自宅を出たんだろうね。


手術室の前で、両手を合わせて握り締め、震えながら泣いていた…」


俺は直ぐには信じられなかった。

他人に俺の事をクズだの負け組だのと罵った母親が、俺の為に涙を流すなど全く考えられない事だ。


分からない…
一体何が、母親をこうまで変えたのか。


いや…
母親得意の、体裁を繕うただのフリかも知れない。

でも確かに、今日の母親の態度は以前とは違っていた様でもある…



俺は何がなんだか思考がまとまらず、ただ混乱していた。


.