「じゃあ帰ろうか!!」
カナはそう言うと俺のリードを柱から外し、病院の表通りへと熱くなったアスファルトの上を歩き始めた。
カナは歩きながら、端から見れば独り言の様に俺に話し掛ける…
「大樹のお母さんも、毎日1時間以上もかけて通って来るのは大変よね。
それに、いくら自分の子供の為とは言え、朝から晩まで大樹の側に座っていると身体も心配だし…」
え?
入院の手続きに来た訳ではなく、毎日来ているのか?
ほんの数年前まで、子供の事など自分の造った作品くらいにしか思わず…
子供の成績が、自分を飾る宝石くらいにしか考えていなかった人が?
「あのね、大樹が病院に運ばれたのを知って直ぐに駆け付けると、もうお母さんが来ていたの。
何もかも途中で放り投げて来たのか、ノーメイクで普段着のままだった…」
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