「馬鹿だよな…

いくら見下そうが、どんなに勝ち誇ろうが、現実的には何も変わらない。

俺が偉くなる訳でもないし、俺の何かが変わる訳でもない。


俺はつまらない嫉妬の為に、たった1人の弟を失ってしまった…

今更許してくれなんて言えないし、当然許してもらえる筈もない。


それでも――…」


兄がそこまで話したところで、目の前の自動ドアが開いた。

そしてカナと母親が話しをしながら、並んで出てきた。

今日初めて会ったにしては、随分と打ち解けた様子だ。


兄は俺の頭をポンポンと2回軽く叩くとスックと立ち上がり、2人の方に向かって歩いて行った。


「じゃあまた、いつでも来て下さいね」

「はい。また明日来ます」

笑顔で挨拶を交わすカナと母親、そしてカナに頭を下げる兄…


何とも奇妙な光景だった。


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