母親が消えていった自動ドアの方向を眺めていると、ふと視線を感じその方を見上げた。


「確かに…
犬なのに、目元が大樹に似ているな」

そこにはまだ兄が立っていて、まじまじと俺の顔を覗き込んでいた。


「この少しひねくれた目が、アイツに似ているんだよな。
何も信じてない、他人を寄せ付けないというか…」

誰のせいで、俺がこんな事になっていると思っているんだよ。

他人事のように口にする兄の言葉に、徐々に怒りが込み上げてきた。


「でも…
アイツをあんな風にしてしまったのは、俺のせいかも知れない。

俺がアイツを追い詰めてしまった…」

兄はそう言うと俺の側に座り、天を仰いだ。


兄のせいばかりではないが、学校に安息の場所が無くなった俺に、自宅を逃げ場所にさせてくれなかったのは紛れもなく兄だ。


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