「私が愚かだった…
学歴や地位が人間の価値を決めるだなんて、そんな事がある筈がないのに」
あの母親のものとは思えない言葉が、俺の耳に飛び込んできた。
正面に座るその目には、かつての冷たい色彩はすっかり消えている…
何があったのかは知らないが、俺には関係がない事だ。
今更普通の母親顔されても、とても母親として見る事など出来やしない。
俺はゴミでクズなのだから…
「…――離婚調停中にね、あの人の派閥の次期事務次官候補が、汚職事件で逮捕されてね…
いきなり違う人が、次期事務次官候補と言われる様になったの。
当然の様にそちら側の勢力が強くなり、前候補の側近だったあの人は、閑職に追いやられたの…」
俺が家を出た後に、そんな事があったとは――
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