俺は今の自分の状況と、老犬がかつて経験した状況がよく似ている事に気が付いた。

俺は信じていたものに裏切られ、悲しみに沈んだ挙げ句に憎しみと怨みに凝り固まっている…


そして未だに、全てを信じる事が出来ず、意固地になってひねくれている。


だからと言って、直ぐに許せる訳ではない。

そんなに簡単ならば、俺はもうとっくに全てを許している…



徐々に太陽が高くなり、更に日陰が少なくなる。

俺が繋がれている駐輪場の端も、コンクリートがジリジリと少しずつ熱くなってきた…


(よいしょ…と)

隣に座っていた老犬が、ゆっくりと立ち上がると全身をブルブルと震わせた。

(さてと、少し喋り過ぎてしまったし…
もう十分休んだから、そろそろ行こうかの)


老犬は病院の敷地内から出る為に、ノソノソと門の方に向かって歩き始めた。


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