(それは、よく見るとその男の子が、小学校に迷い込んだ時に石を投げ付けてきた男の子と同一人物と気付いたからじゃ。

当然、自分の手に噛み付いたワシを、大人に言って叩きのめしにきたと思った…


男の子はワシに噛まれた右手を左手で押さえながら、あれこれと大人に言っていた。

大人が少しずつ近付いてきて、ワシに向かって手を伸ばしたが、ワシにはもう抵抗する力すら残っておらず…)


俺は唾をゴクリと飲み込んだ。

(そ、それで?)


(ワシはもうダメかと思ったが…

驚いた事に、その大人はワシを抱え上げると溝から出したのじゃ。

そして偶然近くにあった空き家まで連れて行くと、屋根のある場所に下ろした。


何が起こっているのか分からずに呆然としていると、溝から助け出しただけではなく…

持参した道具で、傷の手当てまで始めるではないか!!


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