老犬のこの姿は、人間の仕打ちによるものだ。
気紛れに飼い、必要がなくなると古い電化製品の様に捨てる――
さぞかし人間を怨み、憎んでいるのだろう…
その人間の中には、当然俺も含まれている。
許されない。
許されない事をしたんだ。
(ずっと人間を憎んできたんですね…)
(いいや)
俺がポツリと溢した言葉に、老犬は目尻を下げて穏やかに笑った。
(なぜ?
そんなに酷い目に遭ったのに、人間を憎んでいないの?
そんな事をされて、許せる筈がないでしょ!!)
問い詰める俺に、老犬は少し驚いた表情をして暫く俺の顔を見て言った。
(確かに最初は怨み、人間に触れられるだけでも吐き気がして吠えて…
よく噛み付いたものじゃ。
でもな――…)
老犬はそれから、思いがけない事を話した。
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