ちぇっと舌打ちして、幸兄の手から力が抜けた。私は、すかさず優しい声の主、裕兄こと梅谷 裕也に駆け寄る。昔から、幸兄は裕兄に弱い。


「裕兄きいて、幸兄ひどいことばっか言うんだよ!!」


裕兄は、私の頭を2,3回軽くポンポンと叩きながら、やさしく笑った。


「わかった。ちゃんと注意しておくよ。それより、さゆきちゃん今日は日直じゃなかったけ?」

 

 裕兄にいわれて、慌てて腕時計を確認すると、時刻は7時45分。走らないと間に合わない時間帯だ。走り出しながら、後ろで手を振っている裕兄に、必ず注意しておいてねと言った。