そんな、心地よい時に身をゆだねていると、たまに終わりが怖くなる。

いつか来る事は分かっている、だけどその先が見えない。
いわゆる『死』みたいなものだろうか。

恐怖心とは厄介なもので、振り払おうと、もがけばもがくほど、それは膨大し心を蝕む。

「欲しかったなぁ…」

少しうつむいて麻衣がつぶやいた。

「俺は見返りのないことはしないんだよ」

そう言いながら、財布を取り出して

「これいくら?」

露店の店員に投げやりな問を投げ付けた。

「え?」

何が起こっているのか理解できていない麻衣が、後ろで固まった。