「着いちゃったね」

先に駅のホームに入り、線路に向かって麻衣が独り言のように言った。

笑っているつもり。実際は、笑えてなかった。
声は震えて、目前まで迫ったその時に怯えている。

涙が零れない様にまぶたをキツく結んだ。

「ちょっと疲れたなぁ、座ろうか」

昭人に促されて、二人でベンチに腰かけた。
線路の向こう側には、きれいな夕焼け。

ホームを駆け抜ける秋の風に後押しされるように、電車がホームへと滑り込む。

開いたドアの向こうは、きっと別世界。