…pipipipi


コムがポケットの中で歌い出す。

手にとって、画面を確認。

知らない番号からの着信


とりあえず出て、知らなかったら放置。
という対策を考え、私は電話に出た。



「もしもし。」


「…あ。もし?」



低くて少し訛りのある声。

ケンタだ。



「何?」


冷たく私は振る舞ってみる。
ケンタは寝れないから暇電に付き合って、と言ってきた。



「おい、ぶす~。」


愛想ない声で私は相槌をうつ。
またいつものやつ。
けんかして、私が恋しくなったら電話してきて仲直り。

本当は電話できて嬉しいし、もっともっと優しくしたい。

けど自分だけが舞い上がるのやだ。



「ぶすにあいたーい。」


「なあ、ぶすってやめて。お前もぶすやん。」


「ええ、じゃなんて呼べばいいの?」


「…ルリコ。」


「ルリコ~ルリコにあいたいよぉ。」


「知らない。」



私だって、会いたいよ。
けどそんなこと言って、結果どうせ会えないなら意味ないやんか。





「てか俺また太ったんだけど!!」


「あー。ルリコでぶ好き。でぶのままでいいやんか。」


「わーい!やった!もっと太るね。」


「きも。」



他愛ない話。
スマホを片手にいじりながら、私はわらった。

スマホでは、サトルとメールをしてる。


『今日はありがとう ルリコと付き合えるなんて嬉し過ぎてやばい!!大好き♡』




そうやん。
私、サトルのこと。好きにならなあかんやん。

どうせ。ケンタなんてまた遠くなって辛くなるだけで。

あんなに幸せそうに笑うサトルの顔。
私はサトルのこと思っていかなあかんやん



『ううん。ルリコでいいの?笑』送信。




「ルリコ冷たい。ひんやり。ねえ、どうしたの?」


甘えた声。
こんな誘惑なんか今の私にとったら、めんどくさいだけだ。

そう言い聞かせた。

けど、電話…切りたくない。
そんなわがまま、誰がきいても、私が悪いんだけど。

もし、サトルのこといったら、ケンタはなんて言うかな?





「私、彼氏できたから。」