そして、二人は学校の中に入った。

「何で真は時間が止まったと、分かったの?」


菜紀の質問に何も言わずに真は腕時計を軽く叩いた。


菜紀は「嗚呼」と感嘆した。


「何で時間が止まったのかなぁ…」


真は頭から冷水をかけられた気分になった。

何故なら、彼が願ったことが現在になってしまったからだ。

いや、違うと自分自身に言い聞かせて「さぁ」と、菜紀に言う。


「また曖昧に返事した」


菜紀は呟いて俯いた。


「悪かった。少し考え事してたから」


「何考えてたの?」


「秘密」


一言だけ言って真は自分の教室に入室した。


教室からは何も音が聞こえない。

聞こえる音は菜紀の足跡の音だけだった。