――昼休み開始と同時に俺は、和泉の腕を掴み強制連行中だ。



「ちょっ……いきなり何?」
「…………」



慌てて訊いてくる和泉には答えず、俺は歩き続けた。



和泉を連れてきたのは、誰もいない視聴覚室。


中に押し込んで、閉めたドアに押し付ける。


逃げられないように両脇に手をついた。



「本当いきなりなん――」
「――お前さ、俺の何が嫌なわけ?」
「え…………」



自分でも驚くぐらい低い声音に、和泉も目を丸くした。



「何でそんなあからさまに嫌うんだよ?マジ、意味わかんねーし。ムカつく」
「……………」



和泉は顔を下に向け、黙り込む。


「アイツには笑えて、どうして俺には笑えないんだよ!?」
「……………んで」
「?」
「……………なんでほっといてくれないんだ!?」


今度は俺が目を丸くする番だった。


「何で近付いてくるんだよ!?嫌われたいのに……」
「そんなに俺に嫌われたいのかよ?」
「そうだよ!だって――」



和泉が下げていた顔を上げた。

その顔は今にも泣きそうだった。



「だって僕は………好きだから」
「………え?」
「新城が好きだから。」



顔を真っ赤にして和泉は言った。