やっぱ不機嫌な顔より、笑顔の方が可愛いな。


あんな風に笑ってた方が……



――笑って?


視線の先の和泉は、並んで歩く友人らしき人物と笑い合っている。



……なんだ、あの笑顔は。
俺には絶対笑わないくせに。


なんか、ムカつく。



「……誰だ、アイツ」
「ん?ああ、藤堂 光(トウドウ ヒカル)だよ。」


大地は一目見てすぐに名前を言い当てた。
その情報力はさすがと言っておこう。



「ふーん……」
「律樹?今すげー怖い顔してるよ。」



和泉が歩いている途中で俺の視線に気がついた。

その顔は途端に不機嫌なものへと変わり、前を通り過ぎるときにはあからさまに視線を外した。


つまり完全なシカト。


「なんか律樹、思いっきり避けられてない?」


隣で見ていた大地は首を傾げた。



「友達(仮)になったんじゃなかった?」
「……うるせーよ。」



和泉のやつ………

アイツには笑いかけて、俺はシカトとは……


いい度胸じゃねーか。



「大地、今日昼別で食うわ。」
「へ?まぁいいけど。じゃ俺は茉莉奈(マリナ)ちゃんと食べよう。」



茉莉奈ちゃんとは大地の新しい彼女のことだろう。


が、今の俺にはどうでも良いことだった。