「…大地」
「ん?」
「俺は不治の病に侵されたらしい。」
「それはよかった。」
翌朝、廊下にて。
隣に立つ大地は声を立てて笑った。
「んで、どんな病だよ?」
「寝ても覚めても、ずっと一人の事を考えちまう。頭が痛くなるぐらい。あー…何これ。」
帰ってから昨日はやりすぎたと反省した。
と、同時にあの真っ赤になった和泉の顔が頭から離れない。
至って愉快に大地は腹を抱えた。
「そりゃ不治の病だな。律樹が人に執着するなんてな。」
「執着……。」
「マジで恋しちゃったんじゃね?」
「恋………?」
和泉に?俺が?
本気の恋だって?
「いや、ないだろ……?うん、ない。」
「素直に認めろって。恋は不治の病。で、相手は?この間の子?」
「………………」
ここで和泉の名前出したら、引かれんだろうな……。
「そーそー。この間の子。」
適当に返したけど、既にこの間の子が誰なのかさえ思い出せない。
「へぇ、そんなにいい女だったんだ?」
「まぁな。」
空返事をして、頭の中では昨日の事を思い出していた。
唇……
柔らかかったな。
「………はぁ」
「溜息なんてついちゃって。こりゃマジだね。」
「うるせーよ。あ、」
廊下の端に、和泉の姿が見えた。
途端に胸が高鳴るのを感じる。
……なんでだ?
「律樹?どしたの、向こう見つめて」
「いや……」
目が釘付けってこういう事を言うんだな、と実感した。
和泉から目が離せない。