「ズバッと…」


「そう。ああいうお坊ちゃんは、ハッキリ言わなきゃダメよ。可能性を持たせると、なんとしてでも手に入れようとしてくる」


「……わかりました」


「わかればいいのよ。では、私は先に失礼するわね」


先輩は意外にあっさり引き下がってくれた。






しばらくして、ナルが店に入ってきた。


「先輩から、帰るって連絡があったけどなにか言われたのか?」


「ううん、用事を思い出したって」


「そうか…ふぅっ、疲れた」


ナルは息を吐いて、あたしの前に腰掛けた。


「疲れるよね、お店の人に謝ってくれたんだもん」


「いや、そうじゃなくて。葵とふたりの方が、やっぱり楽だな。変にカッコつけなくていい」


「えぇっ?」


「先輩の手前、先に出てろよって言ったけどな。ホントは、まだ一緒に店ん中見てまわりたかったしな。

女はみんな、あーいう雑貨が好きなんだろ?雑誌で読んだことがある」


「みんなって…そうじゃない人もいるよ…」


「お前も?」


「あたしは…好きだけど」


「だろ?葵に似合いそうな、部屋着があったから見て欲しかったのにな」


悔しそうに言うナルが、なんだかかわいい。


「部屋着って。まだ新居のことを考えてるの?」


「当たり前だろ。そうそう、店員にカードを渡して、これで清掃業者を呼んだ代金を支払うように言ったら引いてたな」


「えぇっ!?」