「今日はお疲れさま」


先輩がクスッと笑う。


「いえ…」


特に話すこともなくて、軽く俯く。


「葵ちゃんに聞きたいんだけど、ナル様のことをどう思っているの?」


ズバッと本題から入った感じ。


あたしをカフェに誘い逃げ場を奪って、


これを聞きたかったんだね。


「どうって…まだよくわからなくて」


曖昧な返事に、しびれをきらしたように先輩が詰め寄ってくる。


「とぼけないで。清香さんから聞いたわ。葵ちゃんがナル様を陥れようとしているって」


…なんだ、清香さんの差し金なの?


「陥れるなんて、そんなこと…」


「考えてもみて?葵ちゃんとナル様では、生きる世界が違うと思わない?

かたや、日本を…いいえ、世界を代表する企業の御曹司。かたや、どこにでもいる普通の女の子」


「そうですね…あたしも、そう思います」


「それなら話が早いわ。ナル様から手を引いて。このままでは、三好家が崩壊してしまうわ」


先輩はあたしの両手をガシッと握り、瞳を潤ませる。