思わず、手を離した。



同時にナルも手を離したみたいで、マグカップが床に落ち、



パリーン!という大きな音をたてて、見事に真っ二つに割れてしまった。









「あら~…縁起が悪いわぁ。冗談なのに」



先輩はさもおかしそうにクスクスと笑っている。



割れたことで焦ったあたしが慌てて床のマグカップを拾おうとすると、ナルがあたしの腕を引っ張った。



「触るな、ケガする」



「だって……」



「ちょっと言いすぎた……これは、もう買わない」



マグカップがふたつに割れたのがショックだったのか、あたしが新居で引いたのが嫌だったのか、



ナルはそのまま無言で、もうひとつのマグカップを棚に戻した。


「お店の人には俺から謝るから、お前らは先に出ててくれ」



「そんな、あたしも謝るよ」


「いいから。少し、ひとりにしてくれ」


ナルはプイとあたしから顔を背けてしまった。