「あたし、トイレに行ってくる!」



大慌てで逃げ出す。



怖いっ。



先輩、あたしのこと邪魔だって思ってるはず。



あたしも着いてこなきゃよかった。









しばらくトイレで時間をかせいだあと、店内に戻った。



先輩は制服に着替えていて、レジで会計をしているところだった。



また買うんだ~、すごいな。



更に紙袋が増えて、ナルは両手いっぱいに荷物を抱えていた。




「ゴメンねぇ、ナル様。こんなに持たせてしまって。今度改めてお礼をするわね」



先輩はナルを見上げてウフフと笑う。



「それは必要ないけど……これじゃ葵と手がつなげないな」



「なっ……」



ナルが見当違いな返事をしたせいで、先輩は引きつっている。



「荷物がなくても手なんてつながないけどね~」



そう返すと、先輩の顔に笑顔が戻った。



……わかりやすい。



「ナル様、葵ちゃんもこう言ってることだし、ムリに押すのもよくないわ。恋愛は、徐々に進んでいくものよ。


あら、あんなところに新しいお店ができたのね。行ってみましょうよ」



先輩がまた違う方向へと歩いていく。