こんなかわいいところもあるんだ?



ちょっとびっくり。



「じゃあ、人には優しくしようね。相手の気持ちを考えて行動できる人になろうよ」



なんだか子供をあやしているみたい。



笑いをこらえながら、ナルの頭をナデナデする。



「優しくなんて、できる自信ないな」



「ナルは、優しいよ。この間、清香さんのお茶会であたしを救ってくれた…。あのときナルが来てくれて嬉しかった」



「それは、お前だから…」



「みんなに、そういう気持ちで接してみたら?」



「みんなに……」



「うん」



ナルは考えているのか、そのまま押し黙ってしまった。



船の汽笛の音だけが夕闇に響き、



視線の先のイルミネーションがキラキラと光っている。



なんだか不思議な気持ち。



彼氏でもない相手と、抱き合ってこんな会話をして。



あたし、



ナルのことが嫌いだったんじゃないの?