そして、今いる部屋から出ていってしまった。



…あれっ、あたしを置いてどこへ?



お金でなんでも解決すると思ってる世間知らずのお坊ちゃまに、ちょっと言い過ぎちゃったかな。



ベッドに座りなおし、乱れた髪を手櫛でといていると、再びナルが姿を現した。



その手には、マグカップがにぎられている。



それも、ふたつ。



そしてベッドの脇にあるサイドテーブルに、それをそっと置き、自分はソファに腰かけた。







「お前もコッチに来いよ」




「えー…あたしはいいよ…っていうか、それ…あたしにいれてくれたの?」




「当たり前だろ。俺は好きなヤツのことを第一に考える、優しい男だからな。


今ので疲れたろ?ココアいれてやったから、ありがたく飲めよ」



……優しい男だって自分で言うところが、全然ダメだよね。



しかもなにかと恩着せがましいし。