「彩葉、なにやってんの?」
びくっ、と肩が大げさなくらいにはねあがる。
そりゃそうだ
だって、きっとこの声は亮ちゃんだ。
何年もストーカーしてるんだ、気づかないはずがない。
でも大丈夫
わたしにはこうなってもいい時のために言い訳がちゃんと用意してあるから。
「亮ちゃん、缶捨てなよー
置きっぱじゃん」
環境に悪いよ、そう言って振り向くと亮ちゃんはいつもの笑顔でごめんなーと言って笑った。
「俺、忘れっぽいからさあ…
あ、缶捨てるからかして」
わたしは手から離されそうになった缶をべこっと音が出そうなほど握りしめつつも、あ!と大声をあげた。
「わたし、委員会あるんだった!
この缶捨てとくよ、ゴミ箱いくの面倒でしょ?」