綾斗のため…?





「まあ、自分のためでもあるんだけどね。理由は二つかな」

「……………」

「一つ目は、今まで俺が創り上げてきた名誉を、綾斗に越して欲しくはないっていう俺の欲張り。綾斗が俺を超えるまえに引退しておきたかったからね」

「……………」

「もう一つが、綾斗のためなんだけど…。まあ、俺の希望でもあるのかもしれないな…」



希望……。




「俺はいろんな世界をみてきて、いろんな景色を見てきた。その世界はとても素敵なものだった」

「世界…」

「俺が芸能界に“香月珠樹”としている限り、綾斗はきっと俺を目指してしまう。そうしたら、綾斗が見るのは、俺が見てきた景色だ」

「……………」