どきどきしっぱなしだ。正直、わたしとしては本城くんと一緒に花火大会っていう時点でもういろいろと大変なのに、この調子じゃたぶん夜までもたない。
なんだか帯が苦しいな。もう少しゆるく巻いてもらえばよかったかな。
「行こっか。お腹すいてない?」
「あっ、うん、大丈夫。本城くんは?」
「実は結構腹ペコっす、俺」
歩きだした彼の左側に並ぶと、自然と歩幅が合っていることに気付く。きょうは浴衣のせいでいつもより歩くのが遅いはずなのに。
もしかしなくても、本城くんがわたしのペースに合わせてくれているんだ。ちょっと窮屈そうにゆっくり動いている彼の長い脚を見て、どうしようもなく胸がきゅうっとした。
「それにしても俺、花火大会なんて何年ぶりって感じだなー」
「そうなの?」
「あんまり興味なかったのかも。部活で忙しかったし」
「あ。でもね、わたしも高校に入ってからははじめてなんだよ、花火大会」
「え、うそ、マジ? なんか意外」
他愛もない話をしながらふたりでゆっくり歩いた。ずらりと屋台が並ぶ道に差しかかるころには、もうずいぶんな人混みになっていた。
やっぱりカップルが多いなあ。
わたしたちも、そう見えているのかな。なんて。
「安西さん」
「は、はいっ?」
「はぐれないようにな」
「はいっ」
びっくりした。心が読まれてしまったのかと思って、ちょっと焦った。
いちいち気色の悪いことを考えているなんて本城くんに知られたら、きっとわたし、その場で死んじゃうよ。