ふたりはなにやら会話を交わしながら、彼女が時折こっちを見たりしていた。すると、本城くんが再びこちらにやって来て、「ちょっと来てほしい」と申し訳なさそうに言う。

言われるがまま、その場にいた全員で階段を上っていると、不意にえっちゃんが耳打ちしてきた。


「なんだろうね、あの女」

「うーん……。妹がいるって本城くん言ってたし、あの子がそうなんじゃないかな?」

「えー。そういうふうには見えないけどなあ、あたし」


えっちゃんは好き嫌いがものすごく態度に出る。それ以上はお互いなにも言わなかったけれど、彼女があの子のことをよく思っていないことは明白だ。

でも、ちょっと気の強そうな子だし、たしかにえっちゃんとは気が合わないのかもしれないな。



「――はじめましてー! 竹内(たけうち)美夜、なっちゃんの幼なじみです」


全員が階段を上りきると、間髪入れずに、車椅子の彼女がそう言い放った。


「いつもなっちゃんがお世話になってます。ぜひお見知りおきをー」


そう言うと、ミヨちゃんはにこっと笑った。あまりにも美しすぎて見とれてしまった。近くで見るとますます整った顔立ちだなあ。


でも、知らなかったな。

本城くんにはこんなにもかわいい幼なじみがいて、なっちゃんと呼ばれているんだ。

やだな。おかしなやきもちと、不安な気持ち。こんな自分もすごく嫌だ。


「美夜。初対面のひとたちにそういう態度はないだろ?」

「えー。美夜は普通に自己紹介してるだけなんですけどー」


親密に話しているふたりを見ていると、胸の奥のほうがちくちくするし、もやもやする。……やだなあ、こんな自分。