「え……えっ、安西さん!? えーマジ……うそ、ごめん。あれ……?」


たまらず泣きだしてしまったわたしに、本城くんは明らかにうろたえているようだった。最悪だ。困らせてしまった。

それでも、どうしよう。止まらない。


「ごめん、安西さん。……泣かないで、ごめん」

「ちょっとお。あたしのあんこのこと、よくも泣かせてくれたなー」

「うわ、荻野さんもごめん。あれ、なんでだ、俺泣かすようなこと言った……?」

「そりゃもうたくさんね! 言いまくりよ! ね、あんこっ」


えっちゃん。いま、わたしに話を振るのはやめてほしい。その質問はちょっと反応に困るよ。


「あのさ、本城。涙はなにも悲しいときだけに出るもんじゃないんだよ。分かってる?」

「……ああ、そっか、うん」


えっちゃんの言葉で、本城くんがもう一度わたしに向き直った。急いで涙を拭って彼を見上げると、目が合って、彼は目を細めて微笑んだ。


「ありがと、安西さん。安西さんのおかげで人生最高の大会になった」


わたしも、たぶんきょうが人生で最高の日になったと思う。


「わたしこそ……ありがとう」

「え?」


本城くんの大切な日を、最後まで見届けさせてくれて。そのうえ、わたしにはもったいないほどの、そんな素敵な言葉までくれて。

ありがとう、本城くん。


「……ううん。ほんとに、お疲れさまでした」


よかった。いちばん言いたかったこと、ちゃんと目を見て言えた。