でも。約15分後、ゴールテープを切ったのは、本城くんじゃなかった。
なにも声が出なかった。こんなにも会場は歓声に包まれているのに、わたしは最後まで『がんばれ』すら言えなかった。
なんだかもう、ここに座っているのがやっとだ。
「あんこ……! 本城2位だよ! すごいじゃん! なにあいつ、すごいんじゃん、ほんとに!」
「本城マジ速えな! やべえ、鳥肌立った!」
えっちゃんが興奮したように目を輝かせる。ちーくんも立ち上がっていた。守田くんも、野間くんも、うれしそうに笑っていた。
そんななか、わたしだけはどうしても、声すら出せない。それなのに涙はバカみたいに出てくるんだから、どうにも情けない。
結果は2位。それでもじゅうぶんすぎるくらいにすごいのだけど、トラックを歩く彼は悔しそうに顔をゆがませていた。
「えっ、あんこ……泣いてるの? もう泣かないでよー。2位でもじゅうぶんすごいよー」
えっちゃんがぎゅっと抱きしめてくれる。そして優しく頭を撫でてくれる。
違うんだ。2位でうれしいとか、悔しいとか。この涙はたぶんそういうんじゃない。
言葉に直すのはきっと難しい。そういう気持ちが一気にこみ上げて、ただ涙に変わっていく。
終わってしまった。
彼の青春が。わたしの青春が。いよいよ、終わってしまったんだ。