7月30日は驚くほどの晴天で。朝、目が覚めてカーテンを開けたとき、なんとなくきょうは素敵な日になるような予感がした。



「――あんこー! 霧島! こっちこっちー」


競技場につくなり、えっちゃんに名前を呼ばれた。遠くから大きく手を振ってくれる彼女に駆け寄る。傍に守田くんと野間くんもいた。

えっちゃんはめずらしく長い黒髪をポニーテールにしていて、なんだかいつもより美人に見える。両耳に光るピアスもうれしそうに揺れている気がした。


「えっちゃん、おはよー。場所取りありがとう!」

「いえいえ。それにしてもあっついねえ、きょう」


タンクトップの袖口から伸びる白い腕をまぶたにかざし、彼女は大げさな苦笑を浮かべる。

思わずどきっとしてしまった。あまりにもその仕草がきれいすぎて。やっぱりえっちゃんは、同性のわたしから見ても本当に魅力的だ。


「いやあ、それにしてもこの炎天下で走るんだね、本城。素直にすごいわ。あ、霧島飲み物買ってきてー」

「ああん? なにさらっとパシってくれてんだ、ふざけんな」

「だって暇そうだから」

「ひとつも暇じゃねえよ!」


やっぱりふたりはきょうも仲が良いなあ。ぎゃあぎゃあ言い合っているふたりがかわいくて、顔の筋肉が緩んでしまう。


正直、えっちゃんとちーくんには報告しようかすごく迷った。きのうの夜、本城くんと会ったことも、花火の約束をしたことも。

でも、なんとなく言えなかった。秘密にしたいとかそういうんじゃなくて。

だって、まだあれは夢だったんじゃないかって思えて、仕方がないんだもん。