どういうことだろう。誕生日をわたしと一緒に過ごしたいって、まさかそう言ってくれているの?

嘘だ、そんなはずない。きっともっと別の意味があるに決まっている。

だって、こんなの。


「俺と一緒に、花火大会、行こうよ」


……こんなの、幸せすぎて死んじゃうよ。


「……で、でも、誕生日……」

「わ、覚えててくれたの。そうなんだよ、今年は誕生日と花火大会がかぶって、なんかすげーうれしくて」


言いながら、本城くんがうれしそうに笑った。


「そんで。……なんとなく、安西さんと花火見たいなって思って」

「な、なんで……?」

「なんでだろ。でも、そう決めとけば自己ベスト出せる気がした」


ああ、神様。これは夢でしょうか?

おかしいよな、と八重歯を見せて笑う彼を見上げて、いま目が覚めたらどうしようかと思う。夢なら覚めないままでいい。

覚めないでいいから、わたし、夢のなかで幸せになります。


「……どうかな?」

「わたしで、よければ……あの、ぜひ……行きたい、ですっ」

「マジ? よかったー。断られたらどうしようかと思ってた、あはは」


そう言いながらも彼はさわやかに笑ってみせるから、なにを考えているのか分からないよ。


「ありがと。……あしたは俺、そのために走る」


本城くん。好きな女の子って、誰なんですか。一緒に花火を見るのはその子じゃなくていいのですか。

こんなことをされると期待してしまうよ。ダメだよ。わたしみたいな女を勘違いさせておいて、そんなふうに笑うなんて、あなたは悪魔なんですか、本城くん。

まさか、わたしを殺す気ですか。