よほど疲れていたのだろう。
ハヤトは、五分もしたらすぐに寝てしまった。
といっても、寝てるときには、人間は完全に意識を失っていないので、時間はいつも通り動いている。


ハヤトが今まで、この能力に気付かないのも無理はなかった。
今まで、事故で気絶したりした経験もハヤトにはなく、普通に世界は動いているからだ。


ただ、世界の時間が止まったときが一つだけあった。
ハヤトが、まだ赤ちゃんのころに大熱をだしたとき、時間は動いたり止まったりしていた。
病院に連れていこうにも、行く先々で門前払いを受けたのだ。
「もう、この子は助からない」
「今の医学では無理があります…」
数々の言い訳を聞きながら、二人は病院を転々としていたが、行く先々で断られていた。

しかし、ハヤトは助かった。

麗奈から聞いた話では、「お父さんが頑張ってくれたのよ」とだけ言っていた。

何故か、麗奈はその話をしたがらなかった。
ハヤトも、なにか理由があるのだな。と、あまりしつこく聞かなかった。
ただ、ハヤトの病気が完治した数日後に、父親がこの世を去ったのは、今でもハヤトの気掛かりになっていた。