時代を感じる小さい喫茶店。
時がここだけ止まっている…
そう錯覚するような店だ。
決して、派手ではない外見。ところどころ、壁のペンキが剥れている。
だが、ボロくさいのではなく、なんとなく〝味〟があった。
逆にのどかな雰囲気を醸しだしている喫茶店が、周りの草原とマッチしていた。
外見からして、レトロな雰囲気を醸し出していた。


「じゃあ、入ろうか」
内海がそう言うと同時に、店のドアを開ける。

「いらっしゃいませー」
ウエイトレスがすぐさま出迎えてくる。
内海は、暇さえあればこの喫茶店に寄っていた。
家に帰るときの通り道にあるというのも関係しているのだろうが、なによりもこの店の雰囲気が好きだった。

木製のテーブル。
珈琲の匂い。
どことなく昭和の香りが漂うような、この喫茶店が大好きであった。

「こちらの席へどうぞー」

2人は、席に案内される。
今日は、平日ということもあり客が少なかった。
案内された席は、端っこの四人席だった。
話をするには絶好の席だな…と内海は思った。

「ご注文がお決まりになりましたら、テーブルの隅に置いてあるボタンを押してください。では、失礼いたします」
ウエイトレスは、内海たちにたいして軽くおじぎをするとすぐに去っていった。
さて…どこから訊こうかな…

「なぁ、美空。なんで俺の名前ーー」

「じゃあ、私はオレンジジュースでも頼もうかな。内海くんはなにがいい?」

さっきから気になっていた、なぜ、俺の名前を知っているのか、という質問をしようとしたが、途中で割り込まれてしまったので、最後まで言えなかった。

うん…まぁいい。

「なんで…俺のなーー」

「あと、ホットケーキとチョコレートパフェ頼もうかな。内海くんも早く決めようよ」

………注文を決めてからにしとくか。