―――時は流れ、夏休み―――
「遅刻だー!!!!」
あたしは浴衣姿で走っていた。
今日は若宮と夏祭りに行く約束をしてたんだけど。
時間あるしちょっと昼寝しよー♪と思ってしまったのが間違いだった。
何で若宮と待ち合わせする時に限って壊れるの!?あたしの目覚まし時計は!!!
「若宮っごめん…!」
「お前な、もう花火始まる…」
振り向いた若宮が、あたしを見て絶句した。
「え!?何!?どっか変!?」
「…まさか浴衣で来るとは思わなかった」
あたしから視線を逸らして言う若宮。
目を背けるほど変なの!?
彩に「絶対浴衣ー!!!!」なんて言われて着てきちゃったけど。
「ちょっと家戻って着替えてくる…!」
「あーっ待て!!違う!!!」
グイッと若宮があたしの腕をつかんで引っ張った。
「…誰も変なんて言ってないだろこの早とちり女」
「え?」
「………………可愛い」
その時、ドーンッと空に大きな花火があがって。
…でも。
バッチリ聞こえちゃいましたよ。
「…今」
「よし行くぞ」
「今可愛いって言った!?」
「っ言ってねぇよ!幻聴じゃね!?」
ギュッとあたしの手を握り、競歩大会レベルの早足で歩く若宮に、思わず笑みが零れてしまう。
「……若宮ってさ」
「……何」
「前々から思ってたんだけど…
ツンデレだよね♪」
「っはぁ!?」